1.はじめに:工事原価について知ろう
工事原価とは?
工事原価とは、建設業者が工事を行う際に必要となる総費用のことを指します。具体的には、下記の4つの要素が主要な構成要素となります。
- 材料費:工事に使用される材料の購入費用
- 労務費:工事に従事する労働者の賃金
- 外注費:他の業者に委託した作業の費用
- 経費:上記以外の工事に関わる一切の費用(輸送費、設備費、管理費など)
これらの費用を適正に算出・管理することで、適切な見積もり作成やコスト削減が可能となります。工事原価の正確な把握は、建設業者の経営改善に直結する重要な要素となります。
2.工事原価の主要な構成要素:4つの要素を徹底解説
材料費
- 工事に必要な材料の購入費用
工事原価の根幹となるのが「材料費」です。これは、工事で使われる材料全ての購入費用を指します。例えば建築工事の場合、鉄骨やコンクリート、木材、塗料といった建築材料の費用が該当します。
また、材料費は工事の種類や規模、使用する材料の質によって大きく変動します。購入価格の交渉や適切な材料の選択、余剰材料の管理などによりコスト削減が可能です。
【材料費の例】
工事種別 | 主な材料 |
---|---|
建築工事 | 鉄骨、コンクリート、木材、塗料 |
道路工事 | アスファルト、砂利、セメント |
配管工事 | パイプ、バルブ、接着剤 |
上記表はあくまで一例であり、具体的な材料費は各工事の詳細に基づき算出されます。確定的な金額を知るためには、見積もりや発注時に必要な材料とその量を正確に把握することが重要です。
労務費
労務費とは、工事に関わる労働に対して支払われる給与や賃金のことを指します。これは具体的には、直接労働者の給与、間接労働者の給与、および社会保険費などが含まれます。
具体的には以下のような内容です。
分類 | 説明 |
---|---|
直接労働者の給与 | 工事に直接関わる作業員の給与 |
間接労働者の給与 | 管理職や技術者、事務員などの給与 |
社会保険費 | 労働者に対する健康保険、厚生年金、雇用保険などの社会保険費 |
これら全てが労務費となり、工事原価を構成する重要な要素です。コスト削減を図る際には、これらの労務費の管理が非常に重要となります。
外注費
工事を進める上で自社だけでは対応しきれない部分を外部の専門業者に委託し、その業者に支払う費用のことを指します。
例えば、特殊な技術を必要とする部分や、人手が足りない場合などに外部の業者に依頼することがあります。その際に発生する費用が外注費です。
外注費は工事原価の一部であり、全体のコストを把握する上で欠かせない要素となります。また、外注費の管理はコスト削減の一助となります。
具体的な外注費の例は、以下の表にまとめました。
外注費の例 | 内容 |
---|---|
施工管理業務 | 工事の進行状況を管理する業務 |
設計業務 | 工事の設計図を作成する業務 |
測量業務 | 地形や土地の計測を行う業務 |
このように、外注費を適切に把握し、適切な業者に委託することで、工事原価を適正に管理することが可能となります。
経費
経費とは、工事を行う上で必要となる、直接的な材料代や労働費以外の費用のことを指します。主に、運搬費、保険料、消耗品費、設備費、旅費などが含まれます。それぞれ具体的に見ていきましょう。
- 運搬費 : 材料や機器を現場まで運ぶための経費
- 保険料 : 工事の事故に備えるための保険の経費
- 消耗品費 : 工事で消耗する小道具や用具の経費
- 設備費 : 工事現場で必要となる設備の導入や維持にかかる経費
- 旅費 : 遠方の工事現場への移動に伴う旅費や出張費
これらの経費は、全体の工事原価の中で見逃せないポイントです。きちんと管理し、無駄を省くことで全体の原価削減に繋げることが可能です。
3.工事原価と建設業会計:違いを理解する
建設業会計と一般会計の違い
建設業会計と一般会計の違いについて解説します。一般的な会計は、売上が発生した時点で収益認識を行います。しかし、建設業会計では工事の進行度に応じた収益認識が特徴です。
たとえば、工事が50%進んだ時点で、契約価格の50%を収益として計上します。これを「進行基準法」といいます。
また、一般会計では費用対効果の観点から一部の経費を固定資産として計上しますが、建設業会計ではすべての経費を工事原価として扱います。
下記の表で主な違いを簡単に比較しました。
建設業会計 | 一般会計 | |
---|---|---|
収益認識 | 工事進行度に応じて計上 | 売上発生時に一括で計上 |
経費 | 全てを工事原価として計上 | 一部を固定資産として計上 |
これらの違いを理解することで、工事原価の管理・把握がより具体的になります。
勘定科目の違い
在建工事勘定という科目が存在するのが建設業会計の特徴です。これは、工事が完了するまでの原価を一元的に管理するための勘定科目で、工事原価の計算に直結します。
一方、一般会計では商品売買に関連する原価は「売上原価」という科目で計上します。また、経費は「販管費」などの科目に分けて計上します。
具体的な例を下記の表で示します。
建設業会計 | 一般会計 |
---|---|
在建工事勘定 | 売上原価 |
– | 販管費 |
これらの違いを理解することで、工事原価の計算について深く理解できます。次節では、これらの科目をどのように活用するかを解説します。
工事原価計算の有無
工事原価の計算は、建設業会計において非常に重要な要素であり、全ての工事事業者が行うべき作業です。なぜなら、工事原価を把握することで、現場の効率や利益率を評価し、適切な価格設定が可能となるからです。
具体的な計算方法は以下の通りです。
- 材料費:使用する材料の数量と単価をかける
- 労務費:労働時間と時給をかける
- 外注費:外部業者に発生する費用
- 経費:その他、工事に必要な一般管理費や設備費など
これらの合計が工事原価となります。
しかし、全ての企業が工事原価を計算するわけではありません。例えば、工事規模が小さく、原価計算にかかる時間がコストとなってしまう場合や、長年の経験から直感的に原価を把握している企業等も存在します。だからと言って、工事原価の計算を省略すべきではありません。意識的な原価管理により、更なる利益向上や業務効率化が可能になるからです。
収益認識のタイミング
工事原価と一般的な会計では、収益認識のタイミングが大きく異なります。通常の会計では、商品を販売した瞬間に収益を計上します。しかし、建設業会計では、工事が完了した時点で初めて収益を認識します。これは、工事が完了するまで経費が発生し続けるためです。
具体的には以下のような違いがあります。
一般会計 | 建設業会計 |
---|---|
商品販売時点で収益認識 | 工事完了時点で収益認識 |
この違いを理解することで、正確な原価計算が可能となり、適切な工事予算の設定や経営判断が可能となります。
4.工事原価と経営:原価管理によるコスト削減のポイント
工事原価を下げるための具体的な方法
工事原価を下げるための具体的な方法とは、主に以下の3つに分けられます。
- 材料費の削減:最初に取り組むべきは材料費の削減です。購入する材料の見直しや、調達方法の改善、大量購入での割引交渉などが効果的です。
- 労務費の削減:次に、労務費を見直します。作業効率を上げるための研修や教育、作業手順の再確認などが求められます。
- 外注費の削減:外注費は、外部の専門家に工事を依頼すると発生します。ここでは、適正な業者選びや、必要な作業のみを依頼するといった視点が必要です。
これらの取り組みにより、工事原価を下げることが可能です。ただし、安易なコストカットは品質低下につながる可能性もありますので、注意が必要です。
会計ソフトやクラウドシステムを活用した効率的な管理方法
会計ソフトやクラウドシステムの活用は、工事原価を効率的に管理するための秘訣です。これらのツールを使うことで、現場での工事進捗や材料の使用状況などの情報をリアルタイムで把握し、原価の管理を行うことが可能になります。
例えば、「会計freee」などのクラウド型会計ソフトには、見積もり作成や請求書発行、経費精算などの機能があります。また、「Kajima Field(カジマフィールド)」のような建設業向けのクラウドシステムでは、施工管理や安全管理、原価管理まで一元管理が可能です。
これらのツールを利用すれば、工事原価の適正化につながり、経営改善に大いに役立ちます。各ツールの特性を理解し、自社に最適なシステムを選びましょう。
システム名 | 特徴 |
---|---|
会計freee | 見積もり作成、請求書発行、経費精算などが可能 |
Kajima Field | 施工管理、安全管理、原価管理が一元管理可能 |
5.よくある質問:工事原価についてのQ&A
工事原価についてよくある疑問や誤解を解消
■ Q1:工事原価とは具体的に何を指していますか? A1:工事原価とは、建設工事などのプロジェクトを遂行するために発生する費用の総計のことを指します。具体的には、材料費、労務費、外注費、経費等が含まれます。
■ Q2:工事原価の算出は難しいですか? A2:専門知識がないと難しく感じるかもしれません。しかし、工程ごとの作業内容や必要な材料、労働力などを把握していれば、一定の精度で算出できます。
■ Q3:工事原価を下げる方法はありますか? A3:経費の見直しや、必要な材料の適正な発注量を見極めること、効率化を図るための新しい技術の導入等、様々な方法があります。
以上が工事原価に関するよくある質問とその回答です。これらを理解することで、工事原価の管理に役立てることができます。
6.まとめ:工事原価を理解し、経営に活かす
工事原価の理解が経営の改善に助けとなる
工事原価を理解することは、経営改善に直結します。それはなぜか。まず、工事原価を把握することで、どの部分にお金がかかっているのか、無駄がないかを明確にすることが可能となります。これにより、コスト削減の機会を見つけ出すことができます。
また、工事原価を知ることにより、適正な見積もりが出せるようになります。これは、適切な利益を確保しつつ、お客様に対して適正な価格を提示することが可能となるため、事業の健全性を保つ上で重要です。
さらに、工事原価の管理は、未然にトラブルを防ぐ力にもなります。予算超過や品質低下を招く原因を早期に発見し、適切な対策を打つことが可能となるのです。
したがって、工事原価の理解とその適切な管理は、経営改善のために欠かせない要素となるのです。