1.はじめに

施工管理という仕事に従事している方々にとって、「おかしい」と感じる瞬間があるかもしれません。長時間労働、週休一日制、サービス残業の常態化、労働環境や待遇と業務量のバランスが悪い、などの問題を抱えているかもしれません。あるいは、パワハラや風土問題、価値観のアップデートが遅すぎるといった種類の問題に直面しているかもしれません。このような状況を改善するためにはどのような手段があるのでしょうか。本記事では、施工管理についての問題点やその解決策を探求し、適切な施工管理とは何かについて考察していきます。

2.施工管理が「おかしい」と感じる理由

(1)長時間労働とサービス残業の常態化

施工管理の現場では、長時間の労働が求められることが多くあります。これ自体は、特定期間における緊急性やプロジェクトの性質上、避けられないかもしれません。しかし、「おかしい」と感じるべきは、これが常態化してしまう状況です。

具体的には、週5日以上、1日12時間以上の勤務が続く場合や、サービス残業が当たり前のように求められる環境です。表1に示すような労働状況が続くと、人間の身体と精神に過大な負担をかけ、生産性を著しく低下させます。

【表1】

労働時間	影響
8時間以上	疲労感
10時間以上	過労死リスク増
12時間以上	生産性低下

過度な労働は、個々の健康だけでなく、全体の業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。だからこそ、施工管理の場では適切な労働時間の管理が求められるのです。

(2)休みが日曜日だけ、プライベートの時間がない

施工管理の業務は非常に緊張感が強く、長時間労働が常態化している場合があります。特に問題となるのが、休日が日曜日だけという働き方です。

一週間が終われば、自分の時間を過ごすことができると思うかもしれませんが、仮に日曜日が休みであっても、その一日がすべて自分のプライベートになるわけではありません。例えば、家族の時間や家事に取られてしまうと、自身のリラクゼーション時間は限られてしまいます。

また、週に一日しか休みがないと、心身のリフレッシュや知識のアップデート、スキルアップのための時間が確保できない問題もあります。

施工管理者の悩み	具体的な問題
週に一日しか休みがない	自己投資の時間が取れない
	家族とのコミュニケーション時間が短い
	趣味やリラクゼーションの時間が少ない

これらは施工管理現場が「おかしい」と感じる要素の一つであり、改善を求めるべき点です。

(3)労働環境や待遇と業務量のバランスが悪い

施工管理では、業務の量とそれに対する待遇や労働環境のバランスが重要となります。しかし、「おかしい」と感じる状況の一つに、このバランスが崩れていることがあります。現状では、責任の重大さや、多岐にわたる業務に対し、待遇が見合っていないケースが見受けられます。

具体的には、高度な専門性を要求される一方で、その報酬が十分でない、あるいは長時間労働が当たり前となっている状況です。また、職場環境が整っていない場合もあります。下記の表は、施工管理の業務内容とその待遇のバランスを示しています。

施工管理の業務内容	待遇
計画作成、現場監督	低賃金
安全管理、品質管理	長時間労働
進行管理、納期管理	不十分な福利厚生

このようなバランスの悪さは、働く側のストレスを増大させ、結果的に仕事の質や生産性を低下させる可能性もあります。したがって、労働環境や待遇と業務量のバランスを見直すことが求められます。

(4)パワハラや風土問題

施工管理が「おかしい」と感じる原因の一つとして、パワハラや風土問題があります。これは、上司や同僚からの言動が適切でない場合や、業務を遂行する上での環境が健全でない場合を指します。

具体的には、上司からの過度な指導や無理な要求、同僚間のコミュニケーションがスムーズに行えない環境などが挙げられます。これらは、施工管理の仕事内容そのものではなく、社風や組織の風土に起因するものです。

これらの問題が存在する場合、施工管理者自身がストレスを感じ、仕事の質や労働意欲を低下させる可能性があります。また、長期的に見て労働者の健康を害する可能性もあります。

したがって、適切な施工管理を行うためには、パワハラや風土問題の解決が必要不可欠です。それは、業務を健全に遂行するための基礎とも言えるでしょう。

(5)価値観のアップデートが遅すぎる

施工管理において「おかしい」と感じる要素のひとつに、「価値観のアップデートが遅すぎる」ことがあります。

まず、価値観のアップデートとは何かというと、それは新しい情報や知識、技術を取り入れることであり、また時代のニーズに対応する柔軟性を保つことです。この価値観の更新が遅れると、施工管理の質が低下し、結果的にプロジェクトの成功に影響を及ぼす可能性があります。

例えば、新しい建築法規や技術の導入、働き方改革による労働環境の見直し、エコロジーやサステナビリティへの配慮など、これら全てが価値観の更新として必要です。それらを無視あるいは遅れて取り入れることで、企業の競争力低下につながりかねません。

したがって、施工管理が「おかしい」と感じたら、価値観のアップデートが遅れていないか確認することが重要です。

3.「おかしい」と感じた場合の対処法

(1)他者に相談する

施工管理の現場で「おかしい」と感じたら、まず他者に相談することが大切です。一人で抱え込むよりも、第三者の意見を聞くことで新たな視点や解決法を見つけることが可能です。

相談できる相手は、信頼できる同僚や上司、または労働問題に詳しい専門家など多岐にわたります。具体的には以下のような形になります。

相談先	メリット
同僚	現場の状況を理解している
上司	具体的な解決策を提案できる
専門家	法律的な観点からのアドバイスが得られる

その際、自身の話だけでなく、他者の意見もしっかりと聞くよう心掛けましょう。それが、問題解決の第一歩となります。

(2)異動を申し出る

あなたが施工管理の仕事内容に問題を感じているのであれば、「異動を申し出る」こともひとつの対処法です。

まず、具体的にどのような点が「おかしい」と感じているのかを整理しましょう。それは人間関係なのか、仕事の量や種類なのか、企業文化なのか。自分が何に問題を感じているのか明確にすることで、どの部署に異動すべきかすら見えてきます。

次に、異動希望の理由を明確に伝えるためには、自己分析と相手への説明が必要です。あなたが持っているスキルや経験が新たな部署でも活かせる点を具体的に示すと良いです。

最後に、異動が認められた場合、新しい環境に適応するための計画も立てることが重要です。自分にとって望ましい環境を作るためには、積極的な行動が求められます。

(3)転職を検討する

「おかしい」と感じた施工管理業務について、解決策の一つとして転職を検討することも重要です。就職活動は大きなエネルギーを必要としますが、自身の環境改善の一手段と捉えてください。

まず、具体的な転職先の選定にあたり、現在感じている問題点を改善できる職場かどうかを確認しましょう。例えば、労働時間、給与、業務内容など、各項目を表形式で比較すると視覚的に理解しやすいです。

また、転職によるキャリアのブレーキを避けるためには、自己分析が必要です。自身のスキルセットや経験が活かせる企業を探すことで、より有意義な転職につながります。

転職は大きな決断ですが、自己実現と職場環境改善の一環と考え、適切なタイミングで行うことが大切です。

(4)限界なら即時退職を考える

施工管理の現場は厳しい場面が少なくありません。しかし、「おかしい」と感じ始め、その状況が人間の限界を超えてしまう場合、即時退職を考えるのも一つの選択肢です。

健康や人間関係に重大な影響を受け、心身共に持続不可能な状態になった時は、自身を守るために適切な判断が必要です。また、元々抱いていた職業観や人生設計が大きく崩れてしまった場合も、一度退職して自身のキャリアや人生を再考する時間を設けることは有益です。

重要なのは、自分自身の心身の健康と生活の質を最優先に考えること。労働環境が「おかしい」と感じる状態が続く場合、即時退職を選ぶ勇気も必要です。

4.施工管理が「おかしい」からといって辞めるべきではない理由

(1)建築・建設の仕事は施工管理だけではない

建築・建設業界における職種は、施工管理だけが全てではありません。設計、積算、営業、エンジニアリングなど、多岐にわたります。それぞれの職種が連携して、完成した建物が安全であり、クライアントの要望を満たすように作業は進行します。例えば、設計部門では建物の設計図を作成し、積算部門では必要な材料や人件費を計算します。一方、施工管理はこれらの情報を元に現場の管理を行います。

職種	主な業務
設計	建物の設計図作成
積算	必要な材料や人件費の計算
営業	新規顧客の獲得・既存顧客との関係維持
エンジニアリング	技術的課題の解決や新たな技術の導入

施工管理が「おかしい」と感じる場合でも、他の職種へのチャレンジが可能です。大切なのは自分自身の職務適性と、業務内容に対する興味・関心です。

(2)現場経験は転職に強みとなる

現場では多くの経験と学びが存在します。特に、施工管理として得た現場の知識や経験は、他の職種への転職でも大きな強みとなります。

1. 現場知識：施工管理は、建設現場の進行状況を詳細に把握し、計画通りに進行するよう管理する役割を持っています。そのため、工程管理、安全管理、品質管理など、建設現場に関する幅広い知識を身につけることができます。
2. トラブルシューティング能力：予期せぬ問題が発生した際には、即座に解決策を見つけ出し、現場を適切にコントロールする能力が求められます。この能力は、どの職種にも役立つスキルです。

これらの経験や知識は、他の職種への道を開くだけでなく、新たな職場での活躍にも直結します。施工管理の現場経験は、あなたのキャリアを後押しする大切な財産となるのです。

(3)建設業界にも給料の見合った仕事は存在する

建設業界というと、過酷な労働条件や給与に見合わない業務量、というイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれません。しかし、それらはあくまで一部の業務や職種に限定された事例であり、実際には建設業界には適切な報酬を得られる数多くの職種が存在します。

たとえば、以下に示す通り、プロジェクトマネージャーや建築設計士、土木技術者など、スキルと経験に応じた報酬体系が整っています。

職種	平均年収（万円）
プロジェクトマネージャー	600
建築設計士	450
土木技術者	400

これらの職種では、専門的な知識を用いて設計や施工計画、品質管理などを行い、それに見合った給料を得ています。私たちが住む家や使う道路、橋など、私たちの生活を支えるインフラはすべてこれらのプロフェッショナルによって設計・建設されています。

したがって、施工管理が「おかしい」と感じた場合でも、建設業界を全否定せず、自身のスキルや経験を活かした別の職種にチャレンジすることも一つの選択肢だと言えます。

(4)施工管理はいつでもやり直せる

施工管理のキャリアは、一度離れてもまた新たに始めることが可能です。これは、施工管理の知識とスキルが汎用性が高く、多くの建設プロジェクトで求められるためです。

具体的には、工程管理、安全管理、品質管理などの基本的な業務を理解していれば、新たなプロジェクトにも適応できます。また、新しい現場での経験は、既存の知識を深める良い機会となります。

さらに、施工管理の資格は一度取得すれば一生有効であり、更新の必要もありません。これにより、キャリアの途中で一度離れても、再び施工管理として働く際には新たな試験を受ける必要がなく、スムーズに再開できます。

このように、「おかしい」と感じた場合でも、施工管理はいつでもやり直し可能なキャリアです。転職や休職を経験した後でも、再び自分のスキルを活かして働くことが可能で、それは大きな強みと言えます。

5.適切な施工管理とは？

(1)バランスの良い労働環境

「バランスの良い労働環境」とは、仕事とプライベートの時間を適切に配分できる環境を指します。施工管理の職場では、特に重要な要素となります。

図1. バランスの良い労働環境の特徴

特徴	具体例
適切な労働時間	サービス残業がなく、定時で帰れる
休日の確保	週休二日制が確保されている
有給休暇の取得	有給休暇が取得しやすい環境

長時間労働が常態化している場所では、健康面や家庭生活に支障をきたす可能性があります。また、定期的な休日を設けることで身体を休めるだけでなく、新たな視点やアイデアを得られます。有給休暇も必要に応じて取得しやすい環境を整え、ストレス発散や自己啓発の時間を設けることが大切です。これらを実現したバランスの良い労働環境は、施工管理の質を高める要素ともなります。

(2)適切な給料対労働量

適切な給料対労働量とは、その業務に見合った報酬が支払われる状況を指します。施工管理の業務は、時には現場の安全を守るために細部にまで目を配る必要があり、その重責と労力に対して十分な報酬が得られることが重要です。

表1：労働時間と給料のバランス

労働時間	給料
短時間	低給
標準時間	適正給
長時間	高給

この表では、労働時間が長ければ高い報酬が得られると理想的に示しています。しかし、現実には短時間であっても重要な判断を求められる場合があります。そのような状況では、業務の難易度や責任の重さを考慮した上で給料が設定されるべきです。

施工管理が「おかしい」と感じる一因として、働いた時間や努力、スキルに見合わない低い報酬が挙げられます。そのため、適切な給料対労働量を確保することで、働きやすい環境を作り、施工管理の品質向上にもつながると言えます。

(3)業務上の価値観の更新が適時に行われる

業務上の価値観の更新が適時に行われるというのは、いわば企業や組織が風通しの良い状態を保つための重要な要素です。特に施工管理の場合、日々新たな技術や手法が開発され、それらを取り入れることで作業効率や安全性を向上させることが可能となっています。

しかし、価値観が固定化して新しい情報や変化に対応できない組織は、時代遅れの手法を使い続け、結果的に労働者の負担を増大させる恐れがあります。また、社会的な規範や法規制の変化にも対応できず、法違反に繋がる可能性もあります。

そのため、例えば組織内での情報共有ツールを活用する、定期的に研修や勉強会を開くなどして、常に最新の知識を身につけていくことが求められます。これにより、施工管理の「おかしさ」を改善し、より良い職場環境を創り出すことが可能となります。

(4)労働者の健康と生活を尊重した風土

適切な施工管理とは、その現場に携わるすべての労働者の健康と生活を尊重した風土を持つことが求められます。

まず、健康面については、例えば長時間労働や過重な負担が体調不良を引き起こすことがないように、適度な休息や労働時間の管理が大切です。また、現場の安全管理にも配慮し、事故や怪我のない環境作りを心がけることも重要です。

さらに、労働者の生活を尊重するとは、例えば適切な休日を設けたり、仕事とプライベートのバランスを考慮したシフト作りを行うことが含まれます。これにより、労働者はリフレッシュの時間を確保し、長期的に仕事に取り組むことが可能となります。

これらの施策を通じて、良好な施工管理が行われる現場は、健康で満足度の高い労働者を確保し、作業効率や品質向上につながります。

6.まとめ

まとめますと、施工管理が「おかしい」と感じた場合には、まずその問題を他者に相談し、場合によっては異動や転職を検討することも大切です。しかし辞めるべきではない理由として、建築・建設の仕事は施工管理だけではなく、現場経験は転職に強みとなること、また建設業界にも給料の見合った仕事が存在し、施工管理は必要に応じてやり直すことが可能であるという点が挙げられます。

そして最も重要なのが、「適切な施工管理」の認識と実践です。これはバランスの良い労働環境、適切な給与対労働量、業務上の価値観の更新が適時に行われ、労働者の健康と生活を尊重した風土を意味します。これらの実現に向けて、私たち一人一人が問題を見つけ、声を上げ、改善に向けた行動を起こすことが大切です。