1. はじめに：施工計画書の重要性

施工計画書とは、建設現場の工事の全体像を示し、具体的なスケジュールや施工方法などを明確にした文書のことを指します。これは、工事がスムーズに進行し、予定通りに完了するための「道筋」であり、「指針」の役割を果たします。また、発注者や関係各所が工事の状況を理解し、適切な判断を下すための重要な情報源となります。

以下に施工計画書の役割を表形式にまとめました。

施工計画書の役割	内容
道筋・指針	具体的な工事スケジュールや施工方法などを示し、工事が計画通り進行するための指南
情報源	発注者や関係各所が現場状況を把握し、適切な判断を下すための情報提供

施工計画書は、その工事プロジェクトの成功を左右する重要な文書であると言えるでしょう。

2. 施工計画書とは？

(1)施工計画書の役割と目的

施工計画書とは、工事の詳細な進行手順を示した文書で、その役割と目的は大きく分けて3つあります。

1. 工程管理：工事の進行スケジュールや各段階での作業内容を明確にします。これにより、工事関連者全員が同一の理解を持つことが可能となり、円滑な作業進行に資します。
2. コミュニケーションツール：発注者や関連する各部署、外部の協力会社とのコミュニケーションツールとして機能します。作業内容や進行状況を視覚的に理解できるため、誤解を防ぎます。
3. 安全確保：作業中の安全対策や問題が発生した場合の対応プロセスを明記するため、現場の安全確保に役立ちます。

以上が施工計画書の主な役割と目的です。このように、施工計画書は工事の進行をスムーズにし、関連者間の理解を深め、そして何よりも現場の安全を保つための重要なツールと言えます。

(2)施工計画書に必要な基本項目

施工計画書を作成する際には、以下の基本項目が必要となります。

1. 「工事概要」：施工する工事の種類や規模、工事期間などを明記します。
2. 「施工方法」：工事を進める上での具体的な手順を詳細に記述します。
3. 「施工スケジュール」：工事の進行計画を示す日程表です。開始日と終了日、重要な工程の進行予定などを含めます。
4. 「安全管理計画」：現場作業者の安全を確保するための方針と対策を列挙します。
5. 「品質管理計画」：工事の品質を担保するための監督体制や検査計画を設定します。
6. 「環境配慮事項」：工事時に環境への配慮をどのように行うかを書きます。

これらの項目は、工事の成功に欠かせない要素です。適切に記述することで、スムーズかつ効率的な施工が可能となります。

3. 施工計画書の作成方法

(1)工事内容の把握と現場状況の確認

施工計画書作成の初めのステップは、「工事内容の把握」と「現場状況の確認」です。

まず、工事内容を詳細に把握することが求められます。これには、工事の種類、規模、予定期間、必要な材料や機材、作業手順などが含まれます。また、現場で働く作業員の数や能力、作業時間なども理解しておく必要があります。

次に、現場状況を確認します。具体的には、現場の地形や地質、周辺環境（建物や道路、植物など）の状態、気象条件などを調査します。これらの情報は、工事の進行計画や安全対策、環境への影響を考慮する上で必要です。

これらの情報を整理し、施工計画書の基礎とすることが大切です。

(2)発注者との協議

施工計画書を作成する際には、発注者との協議が欠かせません。各工程の詳細な進行プランや工事全体のスケジュール、使用する機材や人員の配置等、発注者の要望を具体的に捉えることで、スムーズな施工を進めるための計画を立てることが可能となります。

具体的には、以下のような項目を確認していきます。

項目	内容
工事の進行スケジュール	発注者の希望に合わせた工事スケジュールを作成
使用機材	使用する機材について、発注者の許可を得る
人員配置	人員の配置について、発注者の承認を得る

発注者との協議を適切に進めることで、後々トラブルを避けるだけでなく、工事の効率化や品質向上にも繋がります。

(3)ひな形の入手と施工計画書の作成

施工計画書の作成にあたり、まずはひな形の入手が必要となります。ひな形はインターネット上で無料で提供されているものを使用することも可能ですが、業務内容により内容が異なるため、自社で独自のテンプレートを作成することも推奨されます。

施工計画書を作成する際の基本的な流れは以下の通りです。

1. ひな形を入手または作成
2. 工事内容を詳細に書き込む
3. 現場状況に合わせて施工方法を記述
4. 必要な資材や人員配置を記述
5. タイムスケジュールを作成し記述
6. 現場の安全対策や環境配慮事項を記述

これらが全て盛り込まれた施工計画書が完成となります。ただしこれらの記述は、建設業法等の関連法律に基づき、かつ発注者の要望を満たす形で具体化されることが求められます。

4. 施工計画書作成のポイントと注意点

(1)「5W1H」を意識した見やすさと分かりやすさ

施工計画書作成において大切なのは、全体像を明確に伝える「5W1H」の考え方です。「5W1H」は、「何を(What)」「誰が(Who)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」を指し、情報の全体像を捉えるための手法です。

例えば、工事内容について記載する場合、以下のように「5W1H」に基づいた記述を心掛けましょう。

• What（何を）：地盤改良工事
• Who（誰が）：A建設会社
• When（いつ）：2022年5月1日〜6月30日
• Where（どこで）：X市Y区Z地区
• Why（なぜ）：地震による地盤沈下対策
• How（どのように）：深層混合処理により地盤を改良

このような「5W1H」に基づく記述は、施工計画書の見やすさと理解しやすさに大いに貢献します。

(2)現場状況と品質、効率のバランスを考慮

施工計画書作成時には、現場状況と品質、効率のバランスを見極めることが重要です。現場状況とは、作業環境、作業員のスキル、使用する機器や材料など具体的な作業条件を指します。これらを正確に把握し、その上で「品質」、「効率」を考慮します。

例えば、現場状況が良好であれば、品質や効率も良くなる可能性があります。しかし、現場状況が良くない場合でも、施工計画書には具体的な改善策を記載することで、品質と効率を向上させる方向へ導くことが可能です。

また、全てを高めることは難しいため、品質と効率のバランスを見極めることも重要となります。皆様も施工計画書作成時には、現場状況と品質、効率のバランスを考慮するようにしましょう。

(3)効率化を目指すツールやソフトの活用

施工計画書の作成には、手書きやエクセルだけでなく、専門のツールやソフトウェアを活用することも重要です。これらは、施工計画書の作成をより効率的かつ正確に行うことを支援します。

例えば、「プロジェクトマネジメントソフト」は、タスク管理や進捗状況の把握、プロジェクト全体の視覚化が可能で、施工計画書作成における時間短縮と品質向上につながります。

また、「CADソフト」を活用することで、より詳細な設計図や工程表を作成することが可能になり、実際の施工計画との齟齬を減らすことができます。

以下に、一部の便利なツールやソフトウェアを表にまとめました。

ツール名	特徴
プロジェクトマネジメントソフト	タスク管理、進捗状況の把握、全体像の視覚化
CADソフト	詳細な設計図、工程表作成

これらのツールやソフトウェアを活用し、施工計画書作成の効率化を図りましょう。

5. よくある質問：施工計画書について

(1)提出期限はどうなっている？

提出期限については、施工計画書を作成する際の最重要事項の一つです。基本的に、この期限は発注者との契約により定められます。多くの場合、工事着工前に提出することが求められます。

下記の表は一般的な流れを示しています：

工事受注	→
施工計画書作成開始	→
施工計画書完成・発注者提出	→
工事着工

ただし、施工計画書の内容によっては、工事途中でも更新が必要な場合があります。その際も新たな提出期限が設けられることが多いです。期限内に適切な内容で提出することは、工事の進行と品質を保つために重要です。

(2)法律で施工計画書作成は義務付けられている？

「施工計画書の作成は法律で義務付けられているのでしょうか？」という疑問について解説します。

施工計画書の作成は、一般的には法令による明確な義務付けがあるわけではありません。しかし、建設業法では、建設工事の実施にあたり、「施工計画」の策定が求められています。この「施工計画」に相当するものが実質的に施工計画書となります。

また、公共工事などでは発注者が施工計画書の提出を要求するケースが多く、その際には発注者の指定する形式で提出することが求められます。したがって、施工計画書は工事の品質や安全を確保するための重要な資料となっています。

以上から、施工計画書の作成自体は法律で直接的に義務付けられているわけではないものの、実際の工事遂行においては重要な役割を果たしていることが理解できます。

(3)施工計画書のテンプレートは存在する？

はい、施工計画書のテンプレートは存在します。多くの施工計画書は、工事名、発注者、施工者、施工期間、工事内容、施工方法、安全対策、品質管理、進行管理などを記載する欄があり、これらを基に具体的な内容を記入していきます。

テンプレートは、さまざまな場所で入手可能です。例えば、建設業界向けの文書作成支援ツールやソフトウェアには、施工計画書のテンプレート機能が備わっていることが多いです。

また、建設業協会や都道府県の建設技術センターなどでは、無料または有料でテンプレートが提供されていることもあります。

しかし、テンプレートを使用する際は注意が必要です。そのままコピーペーストするのではなく、現場状況に合わせて適切に修正・補完することが求められます。

6. まとめ：施工計画書作成成功へのステップ

施工計画書作成の成功へのステップは以下の通りです。

1. 工事内容と現場状況の把握：まずは何を施工し、どのような場所で工事を行うのかを詳しく把握しましょう。
2. 発注者との協議：発注者の要望や予算、期間などを聞き、それを元に計画を立てます。
3. 施工計画書の作成：ひな形を入手し、具体的な施工計画を記述します。ここで「5W1H」を意識し、現場状況と品質、効率のバランスを考慮した内容にしましょう。

また、スムーズな作成のために専用のツールやソフトを活用することも一つの方法です。これらは作業効率化だけでなく、ミスの防止にも繋がります。

施工計画書は工事遂行の基盤であり、その品質が結果に大きく影響します。慎重さと同時に効率性も忘れず進めましょう。