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「実行予算」って何?その必要性と効果的な運用方法を解説

目次

1. 実行予算とは?

(1)実行予算の基本的な定義と役割

実行予算とは、事業計画やプロジェクトを具体的に進行させるために必要な資金を算出し、その内訳を明確にしたものです。この予算は、企業が一定期間で発生する費用を先行して見積もることで、資金繰りをスムーズにし、無駄な支出を抑制する役割を果たします。

また、実行予算は以下のような役割も担っています。

  1. 事業の目標達成のための資金配分:各部門やプロジェクトに必要な資金を明確にし、目標達成に向けて資金を適切に配分します。
  2. 管理・評価ツール:実行予算と実際の経費を比較することで、費用の適用性や経済性を評価し、必要に応じて改善策を立てます。

以上が実行予算の基本的な定義と主な役割です。具体的な作成方法や運用方法、注意点等については、次節以降で詳しく説明します。

2. 実行予算の必要性

(1)現場ごとの費用を理解するため

実行予算は、事業の進行度に応じて具体的な費用配分を行うツールです。現場ごとの費用を理解することで、各部署やプロジェクトが予算内で効果的に運用しているのか確認ができます。

具体的には、以下のように現場ごとの費用を明確化します。

現場費用
開発部〇〇万円
営業部〇〇万円
人事部〇〇万円

特に費用が高い部署やプロジェクトは、費用削減の対象となりやすいため、その予算運用の詳細を把握することは重要です。また、これにより全体の予算配分の見直しも行うことができます。

(2)実行予算と実績を比較し、コスト管理を行うため

実行予算は予定された活動に必要な費用を見積もるためのツールですが、それだけではなく、経営管理の一環として活用されます。具体的には、予算実績の管理に大いに役立ちます。

活動を進行していく中で、予定した予算と実際に発生した費用(実績)を比較することで、経営状況を明確に把握することが可能になります。例えば、以下のような表を作成して比較を行うことが一般的です。

項目実行予算実績差異
材料費100万円120万円+20万円
人件費150万円130万円-20万円
その他50万円50万円±0万円

この比較を行うことで、材料費が予算を超過し、人件費が予算よりも抑えられたことが明確になります。この情報を元に次の期間の実行予算を見直すなど、コスト管理を行うことができます。

3. 適切な実行予算の作成方法

(1)作成者を明確にする

実行予算を作成する際には、まず誰がその作成を担当するのかを明確にします。一般的に、この作成者とは財務部門や予算管理の専任スタッフが該当しますが、企業やプロジェクトの規模によっては、各部門のリーダーやプロジェクトリーダーが担当する場合もあります。

作成者には、具体的な業務内容、予算計上のルール、会社の方針などを理解し、それらを反映した実行予算を作成する能力が求められます。また、予算と実績の差異分析や、改善策の提案も作成者の役割です。

具体的な役割については以下の表をご参照ください。

作成者の役割詳細
予算作成部門の業務内容を理解した上で、適切な予算を計画・作成します
差異分析予算と実績の差異を分析し、原因を特定します
改善策提案差異分析を基に、改善策を提案します

作成者が明確であれば、予算作成の進行状況を把握しやすくなり、必要な時に適切なサポートが可能になります。

(2)見積もり書を元に組み換える

実行予算を作成する際、最初の一歩となるのが見積もり書を元に組み換えることです。見積もり書は、事業計画やプロジェクトの開始前に作成され、予定している活動に必要と予測される費用を詳細に記載したものです。

実行予算作成のために見積もり書を使う理由は、見積もりが具体的な業務内容とそれに伴う費用を明確に示しているからです。これを元に、各部門やプロジェクト、業務ごとに必要な予算を割り当て、全体の財務計画を作成します。

具体的な手順は以下の通りです:

  1. 見積もり書を確認し、各項目の費用を把握する
  2. 費用を部門やプロジェクト、業務ごとに分割する
  3. それぞれの予算を合計し、全体の実行予算を作成する

このように見積もり書を元に実行予算を組み立てることで、組織の財政状況を正確に把握し、効果的な資源配分を行うことが可能になります。

(3)エクセルや専用のシステムで実行予算を作成する

実行予算の作成には、エクセルや専用のシステムを活用することが推奨されます。エクセルは、自由度が高く、個別のニーズに合わせたカスタマイズが可能なため、初めて実行予算を作成する際には最適です。

まずは、必要な項目を列に入力します。例えば「項目名」「予算額」「実績額」「差異」などが考えられます。次に、それぞれの項目に対応する金額を行に記入し、予算額と実績額の差異を自動計算するよう設定します。

一方、予算作成が複雑または頻繁に行われる場合は、専用のシステムの導入を検討するとよいでしょう。これらは、データの一元管理や複数人での作業、過去データの比較など、より詳細な分析が可能です。

どちらの方法を選択するかは、組織の規模や予算作成の頻度、必要な機能等によります。それぞれの特性を理解し、最適な方法を選びましょう。

(4)調整と決済をする

実行予算の作成過程では、最後に調整と決済を行います。このステップは、各部署や担当者が作成した実行予算が会社全体の予算とマッチしているかの確認、そして補正作業を含みます。

具体的には、まずすべての実行予算を集め、それらが合算した時の総額が会社全体の予算と一致しているか確認します。一致しない場合は、該当部署と協議しながら調整を行います。

次に、実行予算の最終決定を決裁者に提示します。決裁者が承認すれば、その実行予算は正式に採用され、各部署の活動の基準となります。

この「調整と決済」のステップは、各部署の予算管理の効率化だけでなく、全社的なコスト管理の成功にも直結する重要なプロセスです。

4. 実行予算の注意点

(1)設計数量と所要数量の違いを理解する

実行予算を作成する際、注意すべき項目として設計数量と所要数量の違いがあります。これらは、プロジェクトを進行させる上で必須のリソースの量をそれぞれ示しています。

設計数量とは、初期の計画段階で予定されるリソースの量です。一方、所要数量とは、実際の業務を遂行するために必要となるリソースの量を指します。これらは明確に区別することが重要で、その理由は以下の通りです。

【表1:設計数量と所要数量の違い】

項目設計数量所要数量
定義計画段階でのリソースの量業務遂行での実際の必要量
影響全体的な予算策定に影響リソースの購入や割り当てに直接影響

実際の業務においては、設計数量に基づいた予算と所要数量に基づいた実績が異なる場合が頻発します。このギャップを早期に把握し、適切に調整することで、リソースの無駄遣いを防ぎ、コスト効率の良いプロジェクト運営が可能となります。

(2)実行予算と差異が発生しやすい項目を確認する

実行予算の中で、予定と実績の差異が発生しやすい項目は、特に注意深く確認する必要があります。例えば、人件費や設備費、材料費などはその典型的な項目です。これらは業務量や市場の動向により大きく変動する傾向があるため、予算作成時の見積もりと実績が大きく乖離することも珍しくありません。

以下に、予算と実際の差異が出やすい項目の一部を表形式で示します。

差異が発生しやすい項目理由
人件費人件費は業務量や残業時間によって大きく変動します。
設備費設備の故障や更新が必要になった場合、予算を超えることもあります。
材料費材料価格は市場の需給バランスにより変動します。

これらの項目への対策は、定期的な予算見直しや、リスクヘッジを行うことです。このように予見可能な項目については、予め対策を練ることで予算管理の精度を上げることが可能です。

(3)材料ロス率の設定を慎重に検討する

実行予算を作成する際、特に注意が必要なのが「材料ロス率」の設定です。これは、材料の使用過程で生じるロスを予測し、具体的な数値として設定するものです。

例えば、製造業であれば、材料を加工する際に必ず一定量の廃棄物が発生します。これを考慮せずに予算を立ててしまうと、実際のコストが予算を超えてしまい、経営に悪影響を及ぼす可能性があります。

ここで重要なのは、「適切なロス率」を設定することです。これは過去のデータや業界の平均値などを参考に設定します。また、ロス率は一律ではなく、製品や工程によって異なることもありますので、詳細な分析が必要です。

具体的な設定方法は以下の通りです。

  1. 過去のデータを基にロス率を算出
  2. 業界平均値を参考に設定
  3. 製品や工程ごとに異なるロス率を設定

これらを踏まえ、実行予算に反映させることで、現場の状況をより正確に把握し、効果的なコスト管理が可能となります。

5. 実行予算とその他の予算(基本予算、積算、見積もり)との違い

(1)実行予算と基本予算の違い

実行予算と基本予算は、その目的と使用シーンで大きく異なります。

まず、基本予算は事業計画の初期段階で設定される予算で、全体の経済状況や市場動向等を見越して決定されます。基本的に、これは大枠の経費配分を示し、企業の経済活動の大方向を決めるものです。

一方、実行予算は具体的なプロジェクトや業務における活動をプランニングし、その実施に必要な費用を見積もったものです。この予算は、具体的な作業を行っていく際の指導となります。

以下に二つの予算の違いをまとめた表を示します。

実行予算基本予算
目的具体的なプロジェクトや業務の経費計算全体の経費配分計画
使用シーンプロジェクトや業務実行時事業計画初期段階

個々の業務やプロジェクトに応じて実行予算を作成することで、より精緻なコスト管理が可能となります。

(2)実行予算と積算・見積もりの違い

実行予算と積算・見積もりは、それぞれ異なる役割を果たします。積算は、事前にプロジェクト全体で必要となる費用を計算するものです。一方、見積もりは、特定の作業や部品など、具体的な要素ごとの費用を評価するためのものです。

実行予算はこれらとは異なり、予算編成と実行の段階で重要になります。実行予算は、実際に作業が開始された後の費用を管理し、予算超過を防ぐ役割を果たします。また、進捗管理やコストパフォーマンスの評価にも使用されます。

以下に、それぞれの特性を表にまとめました。

実行予算積算見積もり
管理の対象作業開始後の費用プロジェクト全体の費用具体的な作業や部品の費用
主な用途予算管理、進捗管理、コストパフォーマンス評価プロジェクト全体の費用計算個別の費用評価

これらを理解することで、適切な予算管理が可能となります。

6. 実行予算の効果的な運用方法

(1)実行予算の目標設定

効果的な実行予算の運用には、明確な目標設定が不可欠です。まず、現場ごとに使用可能な資源を把握し、適切な利益を求める目標を設定します。次に、短期的・長期的な視点から目標を区分けし、それぞれの目標が現場の運用と一致するよう調整します。

表1. 実行予算の目標設定例

短期目標長期目標
現場の利益を最大化する組織全体のリソースを最適化する

また、目標設定は一度きりではありません。業績や市場環境の変化に応じて定期的に見直し、必要に応じて目標を更新することで、実行予算の運用効率を高めることが可能です。このプロセスを通じて、組織全体のリソースの最適化を図ります。

(2)予算実績の管理

実行予算の管理において重要な役割を果たすのが、予算実績の管理です。予算と実績の比較により、予算達成度を見極め、効果的な経営判断をする材料となります。

まず、実行予算と実績の比較を定期的に行うことが重要です。毎月または四半期ごとにこの比較を行うことで、予算達成度の推移や状況把握が容易になります。

次に、比較結果をもとに必要な対策を立てます。予算と実績に大きな差異がある場合は、その原因を分析し、必要に応じて予算の見直しを行うと良いでしょう。

また、予算実績管理のためのツールも活用しましょう。専用のシステムを使えば、データ入力から分析までをスムーズに行うことができます。

これらのステップを踏むことで、実行予算はより効果的に運用され、経営の安定化につながります。

7. まとめ

本記事では、「実行予算」について詳しく解説しました。まず、実行予算は、個々の部門やプロジェクトが計画に基づき実際に行動するために必要な予算のことを指します。現場での費用管理や財務の健全性を保つためには、適切な実行予算の立案と運用が不可欠です。

また、実行予算とその他の予算(基本予算、積算、見積もり)との違いも明らかにしました。それぞれには適用する場面や目的が異なるため、使い分けることでより効果的な経営が可能となります。

最後に、実行予算の効果的な運用方法を紹介しました。実行予算の目標設定と予算実績の管理を行うことで、事業の予算管理がスムーズに行えます。

以上の内容をふまえ、適切な実行予算の作成と運用が、事業の成功に繋がることを理解いただけたら幸いです。

この記事を書いた人

沢田 亜嵐のアバター 沢田 亜嵐 住宅DXラボ運営

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