1. はじめに
プロジェクトを成功に導くためには、見やすい工程表の作成は欠かせません。工程表は、作業の進行状況を把握し、問題が発生した際に迅速に対応するための重要なツールです。しかし、工程表が複雑で見づらいと、作業者や関係者が正確な情報を得られず、プロジェクトの進行に混乱が生じる可能性があります。
この記事では、「見やすい工程表」の作り方について詳しく解説します。具体的な作成方法、わかりやすいデザインのポイント、便利な工程表作成ソフトウェアの紹介など、プロジェクト管理を効率化するための情報を提供します。また、工程表の基本的な定義や利用シーン、必要性についても説明しますので、初めて工程表を作成する方でも安心して読み進めていただけます。
2. 工程表とは何か?
工程表の一般的な定義と利用シーン
工程表とは、プロジェクトを進行させる際の各タスクの開始日、終了日、担当者などを一覧にした表です。具体的には、以下のような形式で記載されます。
【表】
タスク名 | 開始日 | 終了日 | 担当者 |
---|---|---|---|
例:設計 | 2021/5/1 | 2021/6/30 | 田中 |
工程表は、建築やIT開発などのプロジェクトでは必須の管理ツールといえます。プロジェクト全体のスケジュール把握、タスクの進捗確認、人員の割り当て等、工程表を利用することで、プロジェクトをスムーズに進行させることが可能となります。また、関係者間での情報共有にも役立ちます。
工程表の種類とそれぞれの特性
工程表には主に「ガントチャート」と「PERT図」の2種類があります。
ガントチャートは、時間を横軸にとり、各タスクを棒グラフで表現したものです。具体的な日程が見やすく、全体の進行度を一目で確認できることが特長です。
一方、PERT図はタスク間の依存関係を強調します。円で表されるノードがタスクを、矢印が依存関係を表す形式で、複雑なプロジェクトでも各タスクのつながりを把握しやすいです。
それぞれの工程表は特性に合わせて使い分けられます。見やすさは表現方法やデザインも大切ですが、何を伝えたいかにより適した形式を選ぶことも重要です。
3. 見やすい工程表が必要な理由
工期遅延を未然に防ぐ
工程表は、プロジェクトの全体像を明確に把握し、工期遅延を未然に防ぐ強力なツールとなります。見やすい工程表を用いることで、各作業やタスクがどの程度の時間を要し、どの作業が完了しなければ次の作業に進めないのか等、一目で理解することが可能です。
例えば以下のような表を使用すると、
作業名 | 開始日 | 終了日 | 所要時間 |
---|---|---|---|
作業A | 1月1日 | 1月3日 | 3日間 |
作業B | 1月4日 | 1月6日 | 3日間 |
作業Aの終了日と作業Bの開始日が連続していることから、作業Aが遅れると作業Bも遅れる可能性があることが分かります。このような情報共有により、予定が遅れそうな場合には早めに対策を講じることができます。
計画変更への迅速な対応
計画変更は、プロジェクトを取り巻く状況により避けられないものです。それを見やすい工程表で迅速に反映することが重要となります。
工程表はプロジェクトの全体像を示す重要なツールで、その進捗状況や予定変更を視覚的に理解するのに役立ちます。計画変更があった場合、それを即座に工程表に反映し、関係者全員が同じ情報を共有できるようにすることが求められます。
具体的な対応策としては以下の点が挙げられます。
- 最新の情報を反映:変更があった時点で工程表を更新し、最新の情報を反映させます。
- ハイライト表示:変更箇所を色分けや強調表示などで目立たせ、関係者がすぐに確認できるようにします。
- 旧計画との比較:旧計画と新計画を比較し、変更内容を明確に把握できるようにします。
これらの対応により、計画変更への迅速な対応が可能となります。見やすい工程表は、プロジェクト成功への一歩と言えるでしょう。
他のステークホルダーとの情報共有
プロジェクトをスムーズに進行させるためには、それぞれのステークホルダーが同じ情報を共有し、理解していることが不可欠です。特に工程表は、計画の進行状況や課題を一目で把握できるため、各ステークホルダーとの情報共有に最適なツールと言えます。
たとえば、以下のような表を作成すると、誰もが直感的に理解できます。
期間 | 作業内容 | 担当者 | 進行状況 |
---|---|---|---|
9/1-9/5 | 設計 | Aさん | 80% |
9/6-9/10 | 製造 | Bさん | 50% |
見やすい工程表は全体像を掴むのに役立ち、無駄なミスを防ぎ、効率的なコミュニケーションを促進します。このように、工程表は単なるスケジュール管理ツールではなく、チーム全体の理解と協力を深めるための重要なコミュニケーションツールとして活用しましょう。
4. 見やすい工程表を作成するためのポイント
誰もが理解できる表現・用語を使う
工程表を作成する際、一番重要なポイントの一つが、「誰もが理解できる表現・用語を使う」ことです。この理由は、工程表はプロジェクトの参加者全員にとって共有資源であり、その内容が一人でも理解できない者がいれば、全体の効率が損なわれるからです。
例えば、以下のような工程表を考えてみましょう。
工程名 | 期間 | 担当 |
---|---|---|
A1工程 | 1月1日〜1月10日 | 山田 |
ここでは、「A1工程」の名称が専門的すぎて、具体的に何を指すのかがわかりません。このような表現では、担当者でない他の参加者や関係者が混乱をきたす可能性があります。
それに対して、工程名を「設計ドラフト作成」とすると、誰もが理解できます。各項目が何を示しているか明確にすることで、全員がスムーズに作業を進めることが可能になります。
シンプルでわかりやすいデザインにする
工程表のデザインは、情報の把握を容易にするためにシンプルさが求められます。見た目が複雑だと、情報の伝達が滞り、混乱を招く可能性があります。
まずは、必要な情報のみを掲載しましょう。具体的には、「作業内容」「作業者」「開始日」「終了日」など、プロジェクト管理に必須の情報を明確に記載します。余分な情報は削除し、必要な情報だけを見やすく配置することが大切です。
次に、色分けを活用します。色分けにより一目で作業の区別がつくようにし、全体像を掴みやすくします。ただし、色は多すぎず、基本的に3〜5色程度に抑えると良いでしょう。
また、文字サイズやフォントも重要です。小さすぎると読みにくく、大きすぎると情報が詰め込めません。見やすさを保つためにも、バランスの良いサイズ選びが求められます。
以上の要点を押さえた上で工程表を作成することで、全ての関係者がスムーズに情報を共有し、プロジェクトを効率よく進めることができます。
工事場所または作業内容で分ける・並べる
工程表を見やすくするための一つの方法として、工事場所または作業内容で表を分ける・並べる方法があります。
例えば、工事場所別に工程表を作成することで、各場所で何が行われるのかを一目で把握することが可能になります。具体的な表は以下のようになります。
工事場所 | 作業内容 | 開始日 | 終了日 |
---|---|---|---|
場所A | 地盤改良 | 2022/4/1 | 2022/4/10 |
場所B | 基礎工事 | 2022/4/15 | 2022/4/30 |
また、作業内容別に工程表を作成することで、各工程がどのような順番で行われるのか、またどの作業がいつまでに終わるべきなのかを明確に示すことが出来ます。これは特に、多くの人が関わる大規模なプロジェクトで効果的です。
時間の単位を切り替えて表示できるようにする
工程表の見やすさを追求する上で重要なのが、時間の単位の切り替えです。プロジェクトの全体像を把握するためには、大きな単位での時間表現、例えば「月単位」が適しています。
月 | 1 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|
工程A | ◯ | ◯ | ||
工程B | ◯ | ◯ | ◯ |
一方で、具体的な作業スケジュールを詳細に描き出すためには、「日単位」や「時間単位」が必要となります。
日 | 1 | 2 | 3 | 4 |
---|---|---|---|---|
工程A | ◯ | ◯ | ||
工程B | ◯ | ◯ | ◯ |
工程表作成時は、それぞれの時間単位を切り替えられるように設定することで、視覚的にも理解しやすくなります。このように臨機応変に時間単位を切り替えられる工程表は、プロジェクトの進行状況に応じた適切な情報共有を可能にします。
休日情報の表示・非表示を切り替えられるようにする
工程表には、休日情報の表示・非表示の切替が可能な仕組みを設けることが重要です。これにより、休日を除いた実働日数だけでなく、カレンダー日数も同時に把握することができ、より現実的なスケジューリングが可能となります。
例えば、以下のような工程表を考えてみましょう。
日付 | 作業内容 | 備考 |
---|---|---|
1/1 | 作業A | 休日 |
1/2 | 作業B | 休日 |
1/3 | 作業C |
この場合、休日情報が表示されていると、「1/1と1/2は休日のため作業が進まない」という情報が直感的に理解できます。
一方で、休日情報を非表示にすると、「作業Aが1/1から、作業Bが1/2から始まる」と誤解される可能性があります。そのため、休日情報の表示・非表示を自由に切り替えられる機能は、混乱を避けるためにも大切です。
印刷したときの見え方も意識する
工程表はPCやタブレットだけでなく、紙媒体でも活用されます。印刷したときの見え方を意識することが重要です。特に、色を用いた表現は注意が必要で、色の濃淡や色盲の方への配慮を忘れないようにしましょう。
例えば、工程の進捗状況を色で表示する場合、ステータスが変わる度に色を変えるのではなく、一定のパターンで色を割り当てることをおすすめします。
- 未着手:白
- 進行中:青
- 完了:緑
ただし、色だけでなく、パターン(例:斜線)も組み合わせると、色が印刷されない場合や色盲の方でも理解しやすくなります。
印刷物での配布も視野に入れ、見やすく伝わりやすい工程表作成を目指しましょう。
5. 工程表作成ソフトウェアの紹介
簡単に見やすい工程表が作れるソフトウェアの紹介
工程表作成に特化したソフトウェアは数多く存在しますが、ここでは特に見やすい工程表が作成できる二つの代表的なソフトウェアを紹介します。それぞれの特徴と、どのようなシーンで使うと効果的かを見ていきましょう。
- マイクロソフトの「Project」 Projectは、業界標準のツールとして広く知られています。見やすさを追求した工程表の作成はもちろん、リソース管理やコスト見積もりなど、プロジェクト全体の管理を一元化できるのが特長です。
- フリーソフトの「GanttProject」 GanttProjectは無料で使えるガントチャート作成ツールです。手軽に始められ、直感的な操作で見やすい工程表が作れます。必要な機能がすべて揃っているため、初めて工程表を作る人にもおすすめです。
どちらも試用版がありますので、ぜひ一度お試しください。
6. まとめ
見やすい工程表作成の重要性とその作成法についての纏め
見やすい工程表の作成は、プロジェクトを成功へと導く重要なキーとなります。その理由は、全体のスケジュール管理を円滑にするだけでなく、工期遅延の予防や計画変更への迅速な対応にも寄与するからです。
良好な工程表作成のためのポイントは以下の5つです。
- 誰もが理解できる表現・用語を使う
- シンプルでわかりやすいデザインにする
- 工事場所または作業内容で分ける・並べる
- 時間の単位を切り替えて表示できるようにする
- 休日情報の表示・非表示を切り替えられるようにする
これらの点を意識し、さまざまなソフトウェアを活用しながら、見やすく、わかりやすい工程表を作成しましょう。